町並み保存の経過と観光まちづくり①

町並み保存の経過と観光まちづくり①

佐原における歴史的町並みの価値や活用の機運が生まれたのは、1975年(s50年)文化財保護法改正に「伝統的建造物群保存地区」が加えられたことに始まる。この制度が始まる事前の国庫補助よる第1次伝統的建造物群保存調査(10か所)に選ばれており、その価値は研究者に知られているところであった。しかしながら調査後、町並み保存の動きが皆無であったことから日本観光資源財団(現、日本ナショナルトラスト)は、福川裕一氏(千葉大学名誉教授)による調査を行い、価値の認識や保存の方向性を「水郷の商都」として刊行した。このことを機に、行政は保存に向け動き出した。保存会議や先進地視察が行われ、該当の行政協力員等には町並み保存に取り組む文書を、市長・教育長名で配布している。にもかかわらず、その後の動きは途絶えた。ただこの時期に、同調した観光面での施策は続き、1984年(s59)に「佐原市観光振興基本計画」が策定され、県の理解を得ながら小野川の擬木柵・柳の植栽や「水郷佐原山車会館」の建設等が行われた。また、住民による「ラブ佐原フエスティバル」「地図のまちさわら」等の協働イベントにも繋がった。

本格的な町並み保存活動は、1988年(s63年)に行われた「ふるさと創生」資金の使い方アイデア募集から生まれた。多くの寄せられた意見から、町並み保存がまちづくりに有効な手段であると選定された。市役所内部で十分な検討を加えた後、住民との話し合い(「まちづくりを語り合う場」)が持たれる中で、「佐原の町並みを考える会」(「小野川と佐原の町並みを考える会」に改称)が結成された。官民協働で保存計画書を作り、住民説明会を開き、地域への啓蒙活動を行い1996年(h8年)には国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されるに至った。町並み保存の成果は、核分裂を起こすように各方面に波及し、町並み観光まちづくりに繋がっている。

1988 「ふるさと創生」使い方アイデア募集

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1991 「佐原の町並みを考える会」
発足官民協働の保存活動
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1994 「佐原市歴史的景観条例」
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1996 「重要伝統的建造物群保存地区」選定
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(建造物の保存修理・修景)
(小野川や道路の環境整備)
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町並みの再生
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2005 「佐原町並み交流館」開館

1993 「佐原市商業振興ビジョン」

1994 「佐原市観光振興ビジョン」

1995 「歴史的町並み観光活性化プラン」

1996 「佐原市都市マスタープラン」

1997 「佐原市公共サイン基本計画」

2001 「佐原市中心市街地活性化基本計画」

2002 「佐原・戦略ビジネスプラン(TMO構想)」佐原商工会議所

2005 香取地域「新市建設計画」

2008 「香取市総合計画」

2011 「佐原市中心市街地活性化基本計画」

・1974年(S49年) 町並み調査

国庫補助により行われた町並み調査で、大河直躬氏(現、千葉大学名誉教授)と千葉大学によって行われた。佐原の町並みで最初に行われた本格的な学術調査であった。ここで提案されている保存範囲は、ほぼ現在の範囲であった。佐原市教育委員会から「佐原の町並」が刊行されている。

・1982年(S57年) 町並み調査

上記の調査を受け、観光資源保護財団によって行われた学術調査。調査は、千葉大学の福川裕一氏(、千葉大学名誉教授)によって行われた。「何を、なぜ、どう保存するのか」伝統的空間構成に着目した都市計画を論じている。「佐原の町並み」-よみがえれ、水郷の商都―が刊行されている。

・1984年(S59年) 「佐原市観光振興基本計画」

「水郷」「市街地」「香取神宮」の3大観光を一つの核とする提案がされた。市街地については、伊能忠敬記念館から都市の歴史・文化に構造変換した。通年観光への指向

・1993年(H5年) 「佐原市佐原地区町並み形成基本計画」

小野川と佐原の町並みを考える会が、行政と協働で作成した町並み保存計画書を市長へ提案した。保存地区の範囲、保存修理の方針や助成額、更に伝建制度の活用等を盛り込んだものであった。これを受け、市から考える会に保存計画作成を依頼され標記の計画書が出来上がった。

・1994年(H6年) 「佐原市観光振興ビジョン」

旧来の観光振興でなく、地域の特性を踏まえた個性的で魅力ある観光のあり方が本格的に検討された。伝統的な町並みの再生・復活・創造と祭りを活かす観光が提案された。

・1994年(H6年) 「佐原市歴史的景観条例」

文化庁の条例モデルを参考に作成されたもの。総則、保存地区、指定建造物等が明文化されている。実際的な範囲や指定等については、その後の保存計画書に基づき都市計画決定される。

・1996年(H8年) 「佐原市都市計画マスタープラン」

市の総合計画を受けて、都市計画分野の基本計画を作成したもの。町並み保存については、既に指定の最終段階にきており計画書に位置付けされた。

・1997年(H9年) 「佐原市公共サイン基本計画」

上記のマスタープランに基づき、来街者の誘引、街中の誘導サインを計画した。佐原駅から町並み地区へ誘導するカラー舗装や道路標識にそのことが窺える。

・2001年(H13年) 「佐原市中心市街地活性化基本計画」

中心市街地活性化基本法に基づいて策定された(「水郷の小江戸、産業観光でにぎわいの再興」)。町並み保存地区が指定されたことを受けて、小野川沿いの歴史ゾーンを中核に、駅前地区、本宿耕地地区を包括する範囲の商業活性化と市街地整備を図った。2003年に範囲を拡大(観福寺)して変更した。

・2002年(H14年) 「佐原・戦略ビジネスプラン(TMO構想)」

「佐原市中心市街地活性化基本計画」を受けて、事業実施を具体化するTMO構想、従来の観光振興から「産業観光でにぎわいの再興」を目指す。佐原商工会議所が2002年にTMO機関として認定された。

・2008年(H20年) 「香取市総合計画」

新市のもっとも基本となる総合計画書。市民の参画と協働によるまちづくりを基本とし、「元気と笑顔があふれるまち~一人ひとりの市民が輝く 活気みなぎる やすらぎの郷 香取~」を将来都市像とした。

計画年は平成20年度から29年度の10年間、5年間を前期とした。